バイト面接決まりました!
2020年3月17日、バイトの面接が確定した。
セブン、ファミマ、ローソンと庶民の味方店舗に片っ端から応募した俺は、自分が庶民にすら成れていないことを忘れていた。
全部無視された
確か、泣かない人ほど性格が良いという話を聞いたことがある。泣くものか。
泣く泣く(実際は泣いてない)ほかのバイトを必死に探していたところ、ある飲食店を見つけた。
俺が欲している条件をほぼすべて内包していたその店は、正しく俺にとってのユートピアであった。
書類送信だと反応が悪いということを学習した俺は、この3年間で培った「相手の顔が見えなければイキれる」という特性を用いて電話をする。
「お電話ありがとうございます。〇〇〇です」
「あっこんにち...じゃなくておいしい、お忙しいところ申し訳ありましぇ、せん」
「ちょっと電波悪いですね」
冷や汗(実際は涙じゃない)が止まらなかった。なんだこのプレッシャーは。
Twitterで知り合った有象無象なんて、この人と比べたら湯葉みたいなものだぞ。
こいつと話すくらいなら、在宅ワーク決め込んでモンスターでガンギマリする人生を送りたい。
わずか数分で恐怖を感じるほど、俺のコミュ力は絶望的に低かった。
こいつの下で働くくらいなら、最低賃金でも良いから、おそらくたんぽぽが主食の高齢者に囲まれたアットホームなファミマで働きたい。
そう思うほどに、度し難いほど、俺は人見知りだった。
すみません!切ってもいいですか!
思わず発したくなる言葉をなんとか抑えて、なんとか会話を続けた。
「なるほど、大体分かりました。」
気付くと、話は終盤に近付いていた。
俺は成し遂げたのだ。
何度も「電波悪いですね」と言われながらも、完遂したのだ。
俺は、安堵のため息をつく。
電話を切ったら何をしようか。アイスでも買いに行くか。
なにせ、俺も立派な稼ぎ柱になるのだ。
我が人生の本懐に少しだが近付いた俺は、どこか気が緩む。
「では、明日は面接に来れますか?」
...あ。
完全に忘れていた。どこかで聞いたことがある。
電話は前戯
俺は、相手を満足させただけなのだ。本番はこれからなのだ。
もしここで辞めれば、「もしかして、EDなの?w」と馬鹿にされる。
覚悟を決めるしかないのだ。
俺は、震える足を酷使して立ち上がり、振り絞るように答える。
「はい..行け...math....」
「ちょっと電波悪いですね」
通話終了後、携帯電話を持つ男は目から汗が出ていた(実際は泣いてます)
!(^^)!<死んできます!